チョコレートの機能性や製造技術に関する全ての詳細データ網羅した、国内唯一の工学図書。

チョコレートの科学
その機能性と製造技術のすべて−

Stephen T.Beckett 著
古谷野哲夫
A5判、198頁、¥3,500(本体)+税

ISBN978-4-7712-0704-2

【解説】
日本語で著されたチョコレートに関する専門書は極めて少なく、チョコレートの理論やその科学的本質を日本語で理解するのは難しい状況にあります。
本書は、同一筆者(S.T.Beckett)による「Industrial Chocolate Manufacture and Use 3rd Edition」の簡易版ともいうべき書物であり、必要最低限の内容は漏れなく含まれている上、大変読みやすい構成となっています。
序文にも書かれているとおり、チョコレート業界の人ばかりでなく、若い人やチョコレートに興味を持つ消費者にも十分理解できる平易な書籍です。
 
本書を読むと、チョコレートが物理的、化学的側面から多くの部分が解明されている事が分かります。これは他の菓子類(たとえば焼き菓子やスナック類、キャンディ類)と比べると大きく異なる点です。その理由は、チョコレートが「油脂を連続相とする固体粒子の分散系」という単純な構造を有しているからで、比較的解析が簡単であるためと考えられます(他の菓子類はでん粉や糖類、タンパク、油脂、空気などが相互作用する複雑系です)。
しかし、チョコレートに水を添加するなどした場合は、この単純系が大きく変化し、途端に解析困難となります。添加した水へ砂糖や粉乳が溶解したり、油脂との相互作用によって乳化が生じたりするためです。この様な系の解析と統一的な理解はまだなされておらず、今後の課題です。
 
さらに、チョコレートの香味に関してはほとんど未解明といえます。チョコレートには数百といわれる香気成分が含まれており、各成分の役割と共存した際の香調、ロースト条件との関係などの研究は部分的に行われているに過ぎません。
さらに原料のカカオ豆そのものの性質もよく分かっていません。カカオ豆収穫後の発酵、乾燥処理が最終チョコレートの香味にどの様な影響を及ぼすかについても不明な部分が多いのです。これらの未解明部分があるものの、本書で解説された「チョコレートの科学」は読むに値するもので、本書を通じてチョコレートの本質がより良く理解され新製品の開発や品質向上、生産性向上などに資する事が出来れば訳者の本望です。(本書、訳者のことばより抜粋)。

【目次】

  序 文
  訳 者のことば
 
  第1章 チョコレートの歴史
 
  1−1 飲料としてのチョコレート
  1−2 食べるチョコレート
  (1)チョコレートクラム
  (2)ホワイトチョコレート
  1−3 英国におけるチョコレート市場
  1−4 チョコレートは健康に良い
  引用文献
 
  第2章 チョコレートの原料
 
  2−1 カカオ豆
  (1)カカオ木
  (2)商業的カカオ生産国
  (3)カカオポッド
  (4)発酵
  (5)乾燥
  (6)貯蔵と輸送
  2−2 糖と糖代替物
  (1)砂糖とその製造
  (2)結晶糖と非晶質糖
  (3)乳糖
  (4)ぶどう糖と果糖
  (5)糖アルコール類
  (6)ポリデキストロース
  2−3 乳および乳製品
  (1)乳脂
  (2)乳タンパク類
  (3)粉乳類
  (4)ホエーおよび粉末乳糖
  2−4 チョコレートクラム
  引用文献
 
  第3章 カカオ豆処理
 
  3−1 カカオ豆クリーニング
  3−2 ローストとウィノーイング
  (1)カカオ豆サイズ変動の問題
  (2)ウィノーイング
  (3)豆ロースト
  (4)ニブローストとリカーロースト
  (5)ロースター
  (6)ロースト中の化学的変化
  (7)マイラード反応
  3−3 カカオニブの磨砕
  (1)ニブ粉砕機
  3−4 ココアバターおよびココアパウダーの製造
  (1)アルカリ処理(ダッチプロセス)
  (2)ココアバター
  (3)ココアパウダー
  引用文献
 
  第4章 液体チョコレートの製造
 
  4−1 チョコレートの粉砕
  (1)分割粉砕機
  (2)混合粉砕機
  4−2 チョコレートのコンチング
  (1)化学的変化
  (2)粘性低下
  (3)コンチング装置
  (4)コンチングの三段階
  引用文献
 
  第5章 液状チョコレートの流動特性制御
 
  5−1 粘性
  5−2 粒子径
  (1)粒径分布
  (2)粘性に及ぼす粒子径の影響
  5−3 粘性に及ぼす油分の影響
  5−4 水分とチョコレート粘性
  5−5 乳化剤とチョコレート粘性
  (1)レシチン
  (2)ポリグリセリンリシノレイン酸エステル(PGPR)
  (3)その他の乳化剤
  5−6 攪拌の程度
  引用文献
 
  第6章 チョコレート中の油脂の結晶化
 
  6−1 ココアバターの構造
  6−2 異なる結晶形
  6−3 予備結晶化(テンパリング)
  6−4 異なる油脂の混合(共晶)
  6−5 チョコレートのファットブルーム
  6−6 ココアバター以外の植物性油脂
  (1)ココアバター代用脂(CBE)
  (2)酵素によるエステル化
  (3)ラウリン系ココアバター代替脂(CBR)
  (4)非ラウリン系ココアバター代替脂(CBR)
  (5)低カロリー油脂
  引用文献
 
  第7章 チョコレート製品の製造
 
  7−1 テンパリング
  (1)液体チョコレートの貯蔵
  (2)テンパリングマシン
  (3)テンパリング程度の測定
  7−2 型成型
  (1)板チョコレート
  (2)シェルチョコレート
  7−3 エンローバー
  (1)テンパリング生地の維持
  7−4 チョコレートの固化
  (1)冷却器
  7−5 釜掛け
  (1)チョコレート掛け
  (2)糖衣掛け
  引用文献
 
  第8章 分析技術
 
  8−1 粒子径測定
  8−2 水分測定
  8−3 油分測定
  8−4 粘性測定
  (1)工場での簡便法
  (2)標準法
  8−5 香味
  8−6 食感評価
  8−7 結晶量と種類
  (1)核磁気共鳴
  (2)示差走査熱量計(DSC)
  引用文献
 
  第9章 チョコレート製品と包装
 
  9−1 法的規制
  9−2 栄養
  9−3 保存性
  9−4 包装
  (1)アルミ箔と紙包装
  (2)ピロー包装(Flow-Wrap)
  (3)ロボット包装
 
  第10章 チョコレートおよびその製品を用いた実験
 
  実験1 非晶質糖と結晶糖
  実験2 粒子分離
  実験3 油脂移行
  実験4 ココアバターの分離
  実験5 チョコレート粘性
  実験6 チョコレートの粒子径
  実験7 レシチンの効果
  実験8 連続相の変換
  実験9 チョコレートのテンパリング
  実験10 固さ測定
  実験11 チョコレートの組成と製品の重量管理
  実験12 分布と確率
  実験13 色素のクロマトグラフィー
  実験14 異なる包材の有効性
  実験15 粘性と香味
  実験16 耐熱性試験
  実験17 膨張係数
  実験18 マイラード反応
 
  索引


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